fujimototakuji2007-04-22

作品データ、レビューのリンク集

IMDb
Alice in Wonderland (1903) - IMDb
基本データ。


British Film Institute
BFI Screenonline: Alice in Wonderland (1903)


・"Alice in Wonderland in stories, films, television, theatre and multimedia"
http://www.alice-in-wonderland.fsnet.co.uk/film_tv_silents.htm


・"The Rabbit Hole"
Review of 'Alice' movies
木下信一によるレビュー。


・監督のCecil M. Hepworthについて("A Mad Tea-Party")
http://d.hatena.ne.jp/chaturanga/20070423/p1


YouTube, Google Video, Rimoのリンク集

YouTube
British Film Institute、Simon Brownのコメント付き。

YouTube


同じもののGoogle Video
http://video.google.com/videoplay?docid=-9209831936497138716


YouTube
投稿者MaidMarianによりセピア色の彩色がなされている。コメントはなし。音楽はクロード・ドビュッシーの「牧神の午後への前奏曲」。

YouTube


Rimo
http://rimo.tv/#/channel?url=http://d.hatena.ne.jp/chaturanga/20070407/p2

私のレビュー

・メモ
史上初のアリス映像化作品。
IMDbのデータによると、1903年10月17日アメリカで公開されたとのこと。英国ではどうだったのか?→要調査。
日本で公開されたことはあるのだろうか?→要調査。
1903年Cecil M. HepworthとPercy Stow監督。当時、Hepworth設立のスタジオで、Hepworthは主にノンフィクション、Stowはフィクションを担当していた。
アリス役はMabel Clark(May Clarkとも)。1889年生まれだから、当時14歳。
BFIのSimon Brownのコメント付きは、ジョナサン・ミラー監督"Alice in Wonderland"(1966)のDVD特典。
http://www.amazon.com/Alice-Wonderland-Mark-Allington/dp/B0000CG8I8
現存するフィルムは8分半ほどだが、元々は12分あったという。全部で16シーンのうち、2シーンが欠落しているとのこと(どこからどこまでを「1シーン」としているか、よく分からないのだが→要調査)。
Wikipedia(Alice in Wonderland (1903 film) - Wikipedia)
によると、YouTubeに欠落のない完全版があるとのことだが、どこにあるんだろう?見つけられない……→要調査。
当時としては、大規模なプロジェクトだった。フィルムは、シーンごとに切り売りされたりもしていた模様。
屋外の撮影には、当時トーマス・クック社が所有していたMount Felixの豪奢な庭が使われた。
1903年というと、キャロルの死後5年。ジョン・テニエルはまだ生きているが、この作品は見たのだろうか?→要調査。


・アリス映像化作品を見るポイントは、次のようなところではないか。

1. キャロル原作の物語・言語遊びをどのようなスタイルでどの程度再現しているか?


2. オリジナルの挿絵、テニエルのイメージとどのような距離をとるか。忠実な再現を目指すか、独自の表現を目指すか。映画の場合でも、テニエルから受ける影響は甚大。


3. アリスの落下、巨大化・縮小化、チェシャ猫の出現・消滅、芋虫やMock Turtleといった不可思議なキャラクターの造型や、コスチュームプレイ、そういったあたりが映像でアリスを表現する際の強みになるが、どのような創意工夫が見られるか?


4. アリス役の魅力。劇映画におけるヒロインの重要性は改めて言うまでもないだろうが、そのヒロインがアリスならなおの事。
 もう少し早く映画が発明されていれば(あるいはキャロルがもう少し遅く生まれていたら)、キャロルはきっと魅力的なアマチュア少女映像を撮っていただろう。アマチュア写真家キャロルが、少女を美しく撮影したように。


1.
この時代の映画で、物語・言語遊戯の再現は難しい。原作からいくつか良く知られたエピソードを抜粋した、といった程度。状況説明のない映像が多く、原作を知らなければ、理解しにくい部分が少なくない。独立したイメージの連鎖、として観れば楽しめるが。


2.
そもそも監督Hepworthの意図もテニエルに忠実に、ということであったらしいが、挿絵のイメージに強く影響を受けている。


3.
サイレント・モノクロ時代特有の素朴な表現技法が、かえって幻想的な雰囲気を醸しだしているところもある。(「映像コメンタリー」の中でいくつか指摘)


4.
アリス役は、メイ・クラーク。1889年生まれで、当時14歳。
モノクロで映える白い服に、色付きのエプロン。
はっきり言って上手い演技というわけではないが、動き・仕草がかわいらしく、十分魅力的、と私は思う。


・映像コメンタリー
1.
 木陰でアリス(Mabel Clark)が一人、髪をいじって、退屈そうに寝転がる。モノクロで映える白い服に、色付きのエプロン。ALICE in WONDERLANDのタイトル。


字幕
Alice dreams that she sees the White Rabbit and follows him down the Rabbit-hole, into the Hall of Many Doors.


 白ウサギ(Mrs. Hepworth、監督の奥さんで、最後に出てくるハートのクイーン役も)が画面左から登場。ジョン・テニエルの挿絵と同じような格好。

 右手に手袋を持ち、左手のハンカチで額の汗をふく。せかせか小走りにアリスの前を横切り、懐中時計を取り出す。時間を見て、慌てて画面手前の穴の中に入っていく。
 アリスも後を追い、穴の中へ飛び降りる。


2.
 穴の断面図のようなショット。画面左から右へ、白ウサギとアリスが前かがみで駆けていく。


3.
 白ウサギ、ドアのあるホールにやってくる。真ん中でしばらく立ち止まった後、扇子を落とし、小走りで画面右へて消えていく。
 やや遅れてアリスも到着。ホールの様子に一驚した後、カーテンのかげにドアのあることを発見。

 しかし開かない。困って後ろに歩いていると、突然テーブルが現れる!上にはカギがあり、先のドアが開く。しかしドアが小さすぎて、手は突き出せても、通り抜けることができない。
 ハンカチを取り出して涙するアリス。
 するとテーブルの上に、”Drink me”と書いてある巨大な紙(この巨大さは、サイレント・モノクロ時代の映画特有の表現法なのだろう。表現主義的、というとオーバーだが)のついたビンがある。
 寄りのショット。ビンを矯めつ眇めつ眺める。
 巨大なタグ付きのビンを飲み干すアリス。テニエルの挿絵と似た構図。

 次の瞬間、テーブルが消える!右往左往のアリス。
 再びテーブルが現れると、テーブルが大きくなっている!アリスは縮んでしまったのだった。
 この大きさなら通り抜けられるかも、先のカーテンの後ろの小さなドアを開けてみようとするも、カギがかかっている。そこで大きくなったテーブルの上を探そうとするが、手が届かない。
 しゃがみこんだアリス、“Eat me”と書かれた箱をあける。
 中のものを食べて大きくなったアリス、きょろきょろあたりを見回していると、またテーブルが!のっているカギをとって、ドアをあける。
 けれども、今度は体が大きすぎて、ドアを抜けることができない。
 アリスはへたりこみ、ハンカチで涙をぬぐう。そこで、床に落ちている扇子をひろい、左手であおぐ
 2回のカットごとに、カメラが遠のき、アリスが縮んでいることを表現。
 自分が縮んでいる原因が持っている扇子のせいだと気づき、放り投げるアリス。


字幕
Alice, now very small, has gained access to the Garden where she meets a Dog and tries to make him play with her.


4.
 画面右から左へ、アリス、ドアを抜けて美しい庭に出てくる。森の木から、枝をとる。
 傷みが激しくかなり見難いが、画面左に犬(原作で’enormous puppy’)が映っている。この犬はHepworthの家で飼われていたBlairで、2年後、”Rescued by Rover”(1905)という大ヒット映画で国民的スターとなったそうな。


字幕
Alice enters the White Rabbit's tiny House, but, having suddenly resumed her normal size, she is unable to get out until she remembers the Magic Fan.


5.
白ウサギの家の中で巨大化しているアリス。右手を窓から突き出す。テニエル挿絵を意識している。

 思い出したように、左手で扇子をとり、あおぐ。徐々にアリスは小さくなり、画面から消えていく。
次のカットでは、窓からアリスの手が突き出している。(ここの繋ぎの時系列は妙で、かえって味になっている?)


6.
アリス、家のドアの前に来る。傍にはカエル召使(監督Hepworthがマスクをかぶって登場)がいる。二三言葉を交わした後、アリスは中へ入る。
部屋の中。公爵夫人、料理番、赤ん坊がいる。

 どんちゃん騒ぎの中、アリスは赤ん坊を抱えて外へ出る。
 赤ん坊をあやすうちに、ブタ(?)に変わる。


字幕
The Duchess’s Cheshire Cat appears to Alice and directs her to the house of the Mad Hatter. ── The Mad Tea-Party


7.
木の上のチャシャ猫に、ハンカチを振るアリス。チャシャ猫消える。
再び現れるチャシャ猫、気狂い帽子屋の家を示す。
 映像が悪すぎるためかえって、闇に浮かび上がるチェシャ猫、といった趣がある。


8.
気狂いお茶会のシーン。帽子屋・三月ウサギ・ネムリネズミ(これ、人形?)が登場。テニエル挿絵の構図を踏襲している。

帽子屋の提案で一つずつ座席を移るくだり、ネムリネズミをティー・ポットにねじ込もうとするくだりなどが入っている。


字幕
THE ROYAL PROCESSION
The Queen invites Alice to join.
Alice unintentionally offends the Queen who calls the Executioner to behead her. But Alice, growing bolder, boxes his ears and in the confusion which results she awakes.


9.
白ウサギを先頭に、トランプ達の行進(大部分を地元の子供が演じたとのこと)。中にはサカナ召使やカエル召使も。
それから、王冠を捧げたジャック、キング、クイーンが歩いてくる。最後尾には帽子屋と王子(?)の姿も。
 アリス、クロケー場でクイーンを怒らせてしまう。クイーン、処刑人を呼んできて、首をはねさせようとする。
処刑人を突き飛ばすアリス。するとトランプ達が、向こうから集団で走ってくる。大慌てで逃げ出すアリス。
 ここでの一連のモッブ・シーンはなかなか壮観。ディズニーアリスの、最後トランプが突進してくるシーンと似ているが影響を与えているのだろうか?


10.
木陰のアリス、夢からさめる。