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Betty in Blunderland (1934) - IMDb

Betty Boop - Wikipedia
Betty in Blunderland - Wikipedia
ベティ・ブープ - Wikipedia

http://www.alice-in-wonderland.fsnet.co.uk/film_tv_anims_03.htm
フライシャー・プロダクション・カンパニーは、パラマウント版"Alice in Wonderland"(1933)で「大工とセイウチ」のパートを手伝ったとのこと!

 一二一ページの「ベティの笑へ笑へ」に続いて三四年(昭和九年)四月六日に製作された「Betty In Blunderland」(ベティの鏡の国訪問)はご存じ「不思議の国」「鏡の国」のアリスから材をとった、「ベティの鬼退治」(一一八ページ)に次ぐ怪奇趣味の作品であり、雰囲気も筋運びも少し「鬼退治」に似ている。わが国でも8ミリのフィルムで売り出されていて、ぼくがいちばん最初に8ミリで見てベティさんにイカれてしまった愛着のある佳作だ。中期の代表作のひとつと言ってもよいのではないだろうか。ただ、題材がアリスなので、その点「アイディアに困った末の作品」という評価をされてもしかたがないと言えば言えるのである。
 この作品のテーマ曲と共にタイトル。作画はローランド・クランデルとトマス・ジョンソン・カーテン・タイトル。
 暖かそうな居間のカーペットの上でベティさんが寝そべり、歌いながら「不思議の国のジグソー・パズル」をやっている。眠くなってきた。兎の頭がやっと見つかって絵が完成。置時計が「おやすみの時間です」と歌う。兎が絵から抜け出し、鏡の中へ入っていく。眼をさまし、兎を追うベティさん。鏡を抜けた時にはすでにロング・ヘアにヘア・タイ、つまりアリスの恰好になってしまっている。この鏡の中に入って行く時の曲は「鬼退治」で暖炉の中へ入って行く時と同じ曲だ。歩いて行くベティさんは腰に手をあて、肩を前後に揺する例の歩きかたがぴったりときまっていて、このあたりクララ・ボウの影響が見られます。ただし演技は真似した方が数段上とは、どうしたことだろう。
 兎は小さな地下鉄の駅に入って行く。そのあとを追い、四つん這いで入っていったベティさんはたちまち穴に落ちる。落ちていきながら、穴の中に干してある洗濯物の挟でスカートがまくれあがるのをとめたりする。棚にあるジャムをとって蓋を開けると、ハロルド・ロイドに似た男の顔が出てきたりという、よくわからぬギャグもある。途中の棚のクッションをとってお尻の下にあて、無事着地。小さな横穴をさらに四つん這いで進むと、カウンターがあり、猫が「SHRINKOLA」つまり縮むコーラという飲みものをやってきた者に飲ませ、からだを縮めている。ベティさんもこれを一杯もらって飲むが、縮んだのはからだだけで服はそのまま。頭からコーラを浴びて服も縮めてもらい、小さな出口から出て行く。いよいよ不思議の国だ。
 こうして書いていくときりがない。スピードがあり、「アリス」の登場人物が次つぎと出てきて何かやるのだが、原典を知らぬことにはギャグも理解できないし、そもそもフライシャー的な出たらめのギャグかもしれないのである。
 例の「気ちがい帽子屋」の帽子の中から、トランプだのキングだの卵だの蛙だの、おなじみの連中を出してきて、その中でベティさんが「Everyone Says I Love You」を歌う。おれのお気に入りの曲である。そもそもはマルクス兄弟の「御冗談でしョ(Horse Feathers)」のテーマ・ソングだった曲であり、わがクラリネットのレパートリィの一曲。徳間ジャパン発売のLP「ジャズ大名」の中に吹き込んでありますので、レコードをお買い求めください・
 メチャクチャなギャグが続き、とどのつまりは帽子の中から例によって竜が出てきて、ベティさんを攫って逃げる。動物たちがこれを追うが、全員崖から落ちてしまう。落ちたところはもとの居間。全員、ジグソー・パズルの中におさまり、ベティさんは眼ざめる。またしてもこっそり逃げ出そうとした兎をつかまえて絵にはめこみ、カメラに向けてウィンクするベティさん。END。
 型通りといえば型通りだが、わけのわからぬギャグの連続にはやはり迫力があり、結構大人にしかわからぬようなギャグもあって、思い入れはあるかもしれないが、八十点という高い点をあたえたい作品だ。ベティさんの演技はもう、欠点というものがひとつも見られない。これは大変なことであろう。どんな名女優の演技にだって計算違いはあるものだ。ベティさん、アニメ女優であったればこその女優としての完成だ。
筒井康隆(1988)『ベティ・ブープ伝 女優としての象徴 象徴としての女優』中央公論社pp.141-144

私のレビュー

・メモ
フライシャー兄弟によるベティ・ブープ・シリーズの中の一篇で、アリスを下敷きにした作品。